診療案内
鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニア(脱腸)とは
ヘルニアとは、腹部(腹壁)の脆弱なところから、腸や腹腔内の脂肪が腹膜と共に出てしまう病気です。腹部のヘルニアの80%が鼠径部に生じ、鼠径ヘルニアと言われてます。
鼠径ヘルニアの症状
殆どの患者さんは、鼠径部の膨らみを自覚し、違和感、痛み等の症状で来院されます。
立位で膨らんで、臥位で膨らみがなくなるのも一つの特徴です。
横になっても、膨らみが戻らず、痛みが強くなる状態は、腸がヘルニアの出口で締められて元に戻らない状態、いわゆる嵌頓状態ですぐに受診する必要があります。状態によっては緊急手術が必要なこともあります。
鼠径ヘルニアの診断
基本的に問診、視・触診ですが、鼠径ヘルニア以外の疾患(まれに精索水腫、女性ではNuck管水腫等)が疑われるときは、超音波検査、CT検査等を受けていただくこともあります。
鼠径ヘルニアの治療
大人の鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく、基本手術が唯一の治療法です。
手術法には2種類あり、前方アプローチ(従来のヘルニア手術)、鼠径部に5-6cmの切開をおいて、ヘルニアの袋を処理したあとに、前方から脱出部にメッシュプラーグを挿入し、ふたをするのと同時にシートを乗せて補強する方法です。
腹腔鏡手術の場合は、お腹の中からメッシュをあてて、脱出部を閉じて補強する方法です。創が小さくなるのと、術後の突っ張り感が少なくなります。麻酔は全身麻酔になります。
当院では従来の前方アプローチで行っております。
麻酔は基本腰椎麻酔(下半身のみ感覚がなくなります)で、抗凝固剤(血液サラサラにする薬)等内服されている方は、局所麻酔で行うこともあります。
手術時間は1時間程度です。

メッシュプラーグとオンレイパッチ(C.Rバード社製)
当院の治療の流れ
術前の胸部レントゲン、心電図、採血は1-2週間前に受けていただきます。
当院では、木曜日午後に入院していただき、金曜日(医師が二人いるため)手術し、週末はクリニックで過ごしていただき、月曜日に退院していただいております。高齢の方で抜糸してから退院される方もいらっしゃいます。
術後2週間は、ジョギング、ゴルフ、腹圧のかかるトレーニング等の激しい運動は控えてもらいます。
術後の合併症
ヘルニア内容が大きい方は、ヘルニアが元あった場所に漿液(体液)が術後貯まることがあります。1ヶ月程度で吸収されますが、穿刺することもあります。
術直後の創感染は問題ありませんが、数ヶ月―数年経過してから、創部に発赤を生じることがあります。メッシュ感染が疑われ、改善しないときはメッシュを摘出する必要があります。